はじめに:共通テストに新設された「情報Ⅰ」とこれまでの高校情報科の歩み

2025年1月の大学入学共通テストから、新教科「情報」が試験科目に新設されました。
この大きな変革を前に、全国の高校や情報科の教員をはじめ、教育現場では「授業をどう共通テスト対策に適応させていくか」について、ここ数年で取り組みが劇的に変化してきたのではないでしょうか。
今までになかった全く新しい教科の共通テスト対策を行うというのは、教える側にとっても学ぶ側にとっても、大きな不安や戸惑いがありますよね。
それでも最近では、試験対策に特化したWebサイトや分かりやすい書籍・問題集も大幅に増え、いよいよ新しい情報教育の環境が本格的に整ってきたことを肌で感じています。
私が高校の情報の教員になった当時は、まだ旧カリキュラムの「社会と情報」や「情報の科学」が授業の軸となっていました。
非常勤講師として複数の学校で多様な生徒たちと向き合う中で、当時の情報科に対する率直な印象は、とにかく「情報って凄く自由な教科だな!」というものでした。
以前は、教科書に沿って具体的に授業を進めるというよりは、PC教室を使って「ワード、エクセル、パワーポイントなどのOfficeソフトの使い方」を1年かけてじっくり実習する学校もあれば、Adobe系のデザインソフトを使ってみたり、中には独自にプログラミングを教える学校もありました。
つまり、「知識のインプット」よりも「PC操作などの技術習得(実技)」が主軸になっていたのです。
しかし、新学習指導要領で「情報Ⅰ」が必修化されてからは、各学校とも「教科書が求める理論や仕組みの理解」に「実践的なPCスキル」を組み合わせるという、より高次元な流れへと変化していきました。
むしろ、現在の教科書は単純な「Officeソフトの使い方」を教える内容ではなくなっているため、授業の進め方に戸惑いを感じている先生方も少なからずおられるのではないでしょうか。
時には、先生方自身が1から「情報Ⅰ」の高度な理論(プログラミングやネットワークなど)を必死で学び直しているケースも耳にします。
そう考えると、これまでの高校の情報授業は、担当教員の得意分野やアイデアを活かせる「学校独自の自由な動きができる独自教科」という側面が強かったわけですが、そのある種の自由な時代は終わりを告げ、「誰もが均一に高度なITリテラシーを学ぶ時代」へと完全にシフトしたと言えます。
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共通テストの必須化でこれからの高校「情報科」の授業はどう変わる?

「情報」が共通テストの必須科目になると初めて耳にしたとき、授業内容(情報Ⅰ・情報Ⅱの概要)を見て「これまでの社会と情報とはレベルが全然違う!」と衝撃を受けました。
自分自身の指導スキルは十分か、どう教えれば限られた授業時間(1年間で2単位程度)の中でこの膨大なカリキュラムを漏れなく教えきれるのかと、最初は大きな危機感を覚えたものです。
(※特にプログラミングのPython指導法については、[こちらのPython導入解説の記事](https://goodteacher1.com/informatics/informatics5/)で実習例を詳しくまとめています!)
実際にふたを開けてみれば、工夫次第で従来の学びを活かしつつ共通テスト対策に繋げられることが分かり、当初の不安は杞憂に過ぎなかったのですが、文部科学省が「情報」を共通テストの必須科目に指定した本質的な意味合いについては、私なりに深く考えるようになりました。
「情報」が共通テストの必須科目となったことで、これまでは高校で2単位(週2時間)の履修が一般的でしたが、今後は受験対策やより深い理解のために、履修単位数が4〜6単位へと増設される時代が必ず来ると思っています。
もし2単位の履修を高校1年生の段階で終わらせてしまうと、高校3年生で共通テストを迎えるまでの約2年間、全く情報の授業に触れない空白期間ができてしまいます。
これでは大学受験で本領を発揮するのは困難ですし、かといって高校3年生の1年間だけで「はい、2単位やって終わりです」とするのも、学習の定着を考えると非常に酷です。
他の主要科目(英語や数学など)と同様に、高校1年から3年までコツコツと積み上げていくカリキュラム設計が極めて重要になってくると考えられます。
すでにいくつかの先駆的な高校では、独自の「情報演習」といった授業枠を増設し、共通テストに向けた本格的な受験対策やプログラミングの実践に取り組んでいます。
また、以前私が勤務していた高校では、高校3年生の選択授業として「国家資格:ITパスポート」の合格を目指す非常にユニークで面白いカリキュラムを設置している学校がありました。
高校卒業時に全員が1つ国家資格を持って社会に出ようという素晴らしいチャレンジです。
このITパスポートの授業を受け持った際は、教員がそれぞれの得意分野を活かして、「ストラテジ系(経営)」「マネジメント系(開発管理)」「テクノロジ系(技術)」の3つのジャンルを分担し、3名体制で強力に協力し合うチームティーチングで授業を行いました。
この試みは、教員である私自身にとっても非常に視野が広がる素晴らしい勉強の機会となりました。
教科「情報」が扱うジャンルの奥深さと実用性を体現したこの授業は、高校生たちにとっても将来のキャリアに直結する大きなモチベーションとなり、大変実りあるものとなりました。
(※ちなみに、情報の成績評価に悩む先生方は、[こちらの成績処理と評価基準の記事](https://goodteacher1.com/informatics/informatics3/)もぜひ参考にしてみてください!)
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現役非常勤講師が実践する「未来を生き抜くための情報授業」と指導の工夫

プログラミング的思考力や論理的解決力を身につけることも大切ですが、私は「情報」という教科を通じて教えられることはもっと広くて深いものだと思っています。
情報は、生徒たちの日常生活に最も密接している「生きた教科」です。
だからこそ、彼らが現在直面しているネット社会のリアル、そしてこれから進学・就職した先で出会うデジタル社会において、情報がもたらす計り知れないメリットと、背中合わせにある危険(デメリット)を正しく見極める「選別力」を身につけてほしいと願っています。
個人の多様性が尊重される一方で、ネット上での他者への思いやりや共感力が問われる今、その倫理観(ネットリテラシー)を教科を通じて伝えられる唯一の場が「情報」なのではないでしょうか。時には、少し「道徳的」なメッセージを含むこともあります。
これは教科書にそのまま書かれている言葉ではなく、私自身が生徒たちの実生活に合わせて噛み砕き、活発なグループワークなどを通じて考えさせている指導の一部ですが、「自分に必要な情報の正しい選別力」をみんなで主体的に学べる教科は、情報の他に絶対にありません。
そう捉え直すと、情報はまさに「これからの未来を生き抜くための最先端の教科」であり、非常勤講師としても日々授業に向き合うモチベーションが俄然湧いてきます。
また、私が現在勤務している学校では、高校1年生を対象に入学直後の4月・5月の授業参観期間が設けられています。
この参観日に情報の授業がある際は、あえてPC操作ではなく「知的財産権や著作権」をテーマにしたグループ授業を行います。すると、授業を見に来られた保護者の方々から、以下のような非常に嬉しい大好評の声を毎年数多くいただきます。
「今の高校では、こんなに実用的で大切なことまで教えてくれるんですね!」
「PC操作だけだと思っていたら、身近な法律やモラルの授業で大人にとっても本当に勉強になりました」
保護者世代の学生時代には「情報の授業」そのものが存在しなかったため、「PCの使い方を教えているのだろう」と思われていることが多いのですが、身近なデジタルコンテンツやSNSに潜む権利侵害のリアルな話をすることで、生徒たち以上に保護者の方々が前のめりで関心を寄せてくださるのです。
そこから「今日の情報の授業、お母さんも勉強になったよ」といった、家庭内での親子の温かい対話や情報モラルについての話題に繋がってくれたらこれほど嬉しいことはありません。
(※授業中、熱中するあまり脱線しそうになる生徒へのスマートなアプローチは、[こちらの授業中の注意・指導法の記事](https://goodteacher1.com/lesson/lesson5/)で詳しく語っています!)
現在、高校生の99%以上が自分専用のスマートフォンを利用し、小学校・中学校からも1人1台タブレット端末による授業が当たり前になっています。
(※各端末の具体的な選び方やトラブル対策は、[こちらのタブレット端末活用術の記事](https://goodteacher1.com/informatics/informatics4/)をご参照ください!)
この「すでにインターネットが空気のように当たり前に存在する世代」に対して、学校が教えるべき本当に大切な役割は、単なる知識の暗記ではありません。
ネット社会における「情報の脅威(セキュリティ)」「情報の信憑性(偽情報の見分け方)」「オンラインの安全性」を今まさに自分ごととして知り、自らのデジタルの使い方を主体的に見直してもらうことです。
それこそが、教科「情報」が背負っている最も重要な責任であり、教育的価値であると確信しています。
私は、単なる授業参観の一時的なパフォーマンスとしてではなく、学校で学んだことが「子どもたちから保護者へ、そして家庭へ伝わり、生活が少しずつより良い方向へ向かう授業」をこれからも探求し、全力で生徒たちに向き合っていきたいと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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