未経験からプログラミング授業に挑戦!教育実習生「ひまわり先生」が掴んだ、生徒を惹きつける授業の極意

板書する先生
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奇跡的に見つかった実習校と、熱血教官T先生の「放任」指導

お世話になったT先生を頼りに、奇跡的に教育実習を受け入れてくれる実習校が決まった私。

これで最短単位取得と最短卒業への道が一気に現実味を帯びてきました。

しかし、ホッとしたのも束の間。ここからが本番です。

「初めて自分が主導する授業」をどう組み立てるかという大きな課題が待っていました。

実習に備えて綿密な打ち合わせをしたいと思い、指導教官であるT先生に相談したのですが、なんと先生は細かい指示を一切くれませんでした。

「教育は経験あるのみ。もし君が授業で何か間違えたり、失敗したりしても、後ろで僕が絶対にすべてをフォローするから。だから、まずは自分のやりたいように、思いっきりやってみなさい」

「やりたいようにやる」……一見、優しく聞こえるこの言葉ですが、新米の実習生にとっては極めて難しい難題でした。

「自分が授業でやりたいこと、伝えたいこととは何だろう?」という根本から、一人で考え抜かなければならなかったからです。

私が担当することになったのは、高校の進学コースを履修しているクラス。

教官からは「おとなしくて真面目な生徒たちだから、手がかかることはない。1から10まで手取り足取り教えなくても、自分たちで進めていけるよ」と説明されました。

そして、授業のテーマは「C言語を用いたプログラミング」でした。

私は、さっそく「授業で達成したいこと」のリスト作成に取り掛かりました。

ここで、かつてパソコン教室のインストラクターとして培った経験が、大いに役に立ったのです

パソコン教室に通う受講生の方々は、それぞれ「これがやりたい」「これが作れるようになりたい」という目的を持っています。

私はいつも、受講生にとっての「やりたいこと=できたら嬉しいこと」と捉え、それを実現するためのステップを提示して指導してきました。今回の教育実習も同様に、全数回の限られた授業時間の中で、段階的な目標を組み立てることにしたのです。

ここで、教育実習を経験されたことがある方なら、少し不思議に思う点があるかもしれません。

通常、高校の教科(情報科など)の教員免許を取得するための教育実習期間は「2週間」です(中学校の免許の場合は3週間)。

一般的なスケジュールでは、最初の1週間は指導教官や他教科の先生方の授業を見学させていただき、レポートを作成。指導案を作成して教官のチェックを受け、最終週にようやく1〜2回の研究授業(公開授業)を行う、という流れが普通です。

そして、その公開授業には多くの先生方や教頭・校長といった管理職が見学に訪れ、授業後にフィードバックをもらうことで教育者としての資質を磨きます。

しかし、私の教育実習は、この通例とはまったく異なるものでした。

指導教官のT先生は、「実習期間がたったの2週間しかない」という現状を、常々とても残念がっておられました。

「本気で教師を目指す人にとって、2週間で教育現場を理解しろというのは無理がある。本当は数ヶ月間じっくり現場を見て、生徒と密に関わる教育を体験してほしい」というのがT先生の強い教育信念だったのです。

その結果、なんと私は実習の3日目にして、すでに教壇に立って授業を持たされることになったのです。

あまりのスピード感に驚きながらも、最初の2日間は、顔も名前も知らない先生方の職員室へ直接足を運び、必死に授業見学の直談判をして回りました。

実は、学校内には「実習生が見学するのに非常に適した、素晴らしい授業を展開される先生」が何人もいらっしゃいます。

私は恥を忍んで、見学させていただいた先生方に「先生の授業、本当に勉強になりました! もしよろしければ、他に『この先生の授業は絶対に見ておいたほうがいい』という先生がいらっしゃれば、ぜひ紹介してください!」とがむしゃらにお願いし、紹介された先生の授業を見学し続けました。

学校の授業

諸先輩方のお墨付きをもらって見学した授業は、どれも目から鱗が落ちるような学びの連続でした。

中でも私が最も感銘を受け、のちの教員生活のベースとなったのが、授業の「展開(時間配分と構成)」についての工夫でした。

多くの学校では、1コマの授業時間は50分間です。

この限られた時間の中で、いかに重要なポイントを伝え、生徒を飽きさせず惹きつけ、誰一人置いてけぼりにせずに理解させるか。そのための技術がぎっしりと詰め込まれていたのです。

授業見学で学んだ極意①:生徒を眠らせない「話し方の抑揚と視線」

先輩先生方の授業で特に印象的だったのは、「話すときの抑揚(声のトーン、スピード、強弱)」です。

どれほど良い内容を話していても、単調な一本調子の話し方では、生徒はどうしても眠くなってしまいますし、どこが重要なのかが伝わりません。

授業のプロである先生方は、まるで落語や舞台を見ているかのように、声の強弱をつけ、時にはスピードを落として語りかけ、生徒をその世界観へと惹きつけていました。

また、「クラス全体に届く声で話し、一人ひとりとアイコンタクトを取る」という基本も、非常に大きな学びでした。

教壇に立つと、35人前後の生徒がずらりと並んでおり、どうしても後ろの席の生徒との間に距離感(見えない壁)が生じがちです。

しかし上手な先生は、教室全体を常に温かく見渡し、生徒たちの表情から「理解できているか」「別のことを考えていないか」を察知し、視線を合わせながら授業の熱量を調整していました。

これは、ただ教科書を読み上げるだけでは絶対にできない技です。

授業のテーマを明確にし、「今日、絶対に持って帰ってもらいたいポイント(核)」を定め、そこへ至るまでのストーリーを頭の中に描いているからこそできること。

生徒がストーリーに引き込まれれば、授業のポイントは自然と脳裏に焼き付きます。こうした授業は、50分間があっという間に過ぎ去っていきました。

授業見学で学んだ極意②:端末を駆使した「クイズ感覚の場面変化」

話し方と並んで重要だと感じたのが、授業の中での「場面の変化(能動と受動の切り替え)」です。

理科の実験などを行う教科は、比較的この変化をつけやすい性質を持っています。

「最初に実験手順を説明する(座学)」→「実際に実験を行う(作業)」→「結果を発表・ノートにまとめる」というように、自然な流れで場面が変わるため、生徒の集中力もその都度リセットされ、授業に集中しやすくなります。

しかし、その構成にただ頼っているだけでは、最終的に「やらされているだけの、退屈な授業」になる危険性もあります。

昨今では、多くの学校で生徒一人ひとりにタブレット端末が配布され、ICT教育が普及しています。

私が見学した中で特に素晴らしいと思ったのは、ICT端末を活用して、実験の途中経過や各グループの状況をリアルタイムで共有する授業でした。

しかもその先生は、最初は実験中のデータを教室の大型モニターにリアルタイムで映し出しておきながら、途中からパッと画面を切り替えて見えなくしてしまったのです。

「さあ、この実験をさらに進めるとどうなるか。ここからは自分たちの目と手で、何が起きるか確かめてごらん!」

まるで、ワクワクするようなクイズを出題されたかのようでした。生徒たちは一気に目の前の実験に没頭し、教室のあちこちから「すげえ!」「どうしてこうなるの?」といった主体的な声が上がり始めました。

授業を受ける生徒たち

実験が一定の段階に達すると、各グループが結果を発表します。面白いことに、グループによって結果が完全に一致しないこともあったのですが、その先生はこう優しく問いかけました。

「AグループとBグループで結果が違っているね。これはどちらかが失敗したわけじゃない。どうしてこの違いが生まれたのか、みんなで理由を考えてみよう」

この問いかけ方が本当に見事でした。

世の中には結果こそがすべてという世界もありますが、「教育現場においては、結果だけをすべてにしたくない」というのが、私の本音です。

「結果に至るプロセス(過程)こそが大切である」という教育観に、私は心から賛同します。

この2週間の教育実習期間に浴びるように見学させていただいた授業展開の工夫は、現在非常勤講師として私が教壇に立っている授業の中でも、大いに活かされています。良いものは積極的に取り入れ、自分のものにしていくのが一番だからです。

授業指導案の作成と、いざ本番!コマンドプロンプトで見せた「マトリックス」のつかみ

いよいよ、私が主導する授業の指導案作成です。

指導案は、50分の授業の流れを細かくタイムラインに落とし込んだ設計図です。

チャイムが鳴り、出席確認を行ってから授業を始めるわけですが、私の担当はC言語を使ったプログラミング。

パソコンの起動から、黒い画面の「コマンドプロンプト」を立ち上げるところまで、すべて1分単位で時間配分を組みました。

操作に戸惑う生徒をどうフォローするかが課題でしたが、すべての生徒の席を個別に見回っていては、肝心の授業が進まなくなってしまいます。そこで私は、「先に設定ができた生徒は、周りで困っている友達をぜひ助けてあげてね。ただし、代わりにキーボードを叩くのではなく、言葉で教えてあげること」というルールを提示しました。

進学コースの生徒たちだったこともあり、お互いに教え合う雰囲気が自然と生まれ、滑り出しは非常にスムーズでした。

そして、最初に私が生徒に見せた画面は、コマンドプロンプトでコンピュータ内のプログラム全容を展開したことでした。

暗黒の画面を、白い英数字の羅列がハイスピードで下へと流れ落ちていく光景。

映画『マトリックス』の世界さながらの演出に、生徒たちの目が一瞬で釘付けになりました。

「つかみはバッチリ」です。

「情報の授業って、なんだかカッコよくて面白そう!」と思ってもらうための、ちょっとした工夫でした(見る人が見れば少々ずるいパフォーマンスだったかもしれませんが、教育実習生の愛嬌として許してほしいです・笑)。

プログラミング画面

その後、基本的なコマンドの入力方法を指導し、「コンパイル後に何が出力されたか、それはなぜか」を丁寧に解説していきました。

またアルゴリズムの重要性、たったひとつの記述ミスで、プログラムは実行されないこと、など伝えたいことはたくさんありました。

しかし、事前に何度も脳内シミュレーションを重ね、トラブルへの対策を用意していたおかげで、話し方・進行・実習のすべてを予定通りにコントロールし、無事に50分間の授業を時間内に完結させることができました。

授業後、指導教官のT先生からも「実習生とは思えないほどスムーズな授業だった」と過分なお褒めの言葉をいただき、「次はもう少し難易度の高い課題を生徒に考えさせてみよう」と、次のステップに向けた具体的な助言もいただきました。

最終的に、私は2週間の実習期間中に計6回の授業を担当させていただくことができました。

もうさすがにクラスの生徒の顔と名前を半分程度は覚えましたし、生徒も私の授業を楽しみにしてくれているのも体感できたので、大変貴重で、今後の教育者としての基盤になったことはいうまでもありません。

(関連記事:[社会人経験を経て挑んだ教育実習!情報科・非常勤講師が語る「実習のリアル」と心得](https://goodteacher1.com/dream/dream11/))

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