【PCインストラクターとしての心がけ】
私が勤めたパソコン教室は、基本的に初心者さんが通って来られる場所で、年齢層は40代~80代が多かったです。
40代で通われる方の多くは、職場でパソコンを触らないといけなくなったけど、今まで使ったことがないから基礎から教えてほしい、という理由で受講されていました。
WindowsXPが発売される前後のタイミングで家庭用PCが急速に普及した感覚がありました。
私が初めて触ったPCはWindows98でしたが、その頃は一家に一台というレベルではなく、職場に数台あるかないか、で触れる人も限定的でした。
それがほんの5年ほどで一家に一台、職場でも一人一台、持てるようになりました。
パソコン教室も世の中の流れを汲んで受講生が増えていきました。
ほぼ個別指導型のパソコン教室だったので、年代と求めるスキルが一人ずつ違い、丁寧にカウンセリングをしながら受講内容を決めていきました。
仕事で効率よく学習したい、若い子に聞くのは恥ずかしい人には、基本的なスキルはもちろんですが、Excelをメインに学習してもらうことが多かったです。
趣味でパソコンを使いたい受講生には、Wordを学習してもらって、メッセージカードや年賀状など、趣味でも使える技術を学んでもらいました。
学習内容はテキストが基本になるのですが、テキスト通りに順調に進められる人もいれば、テキストプラスαで補足やサポートが必要な人もいます。
この個別サポートができる、というのを売りにしていたパソコン教室だったので、初めてのインストラクターとしてのスタートがとても良かったと今でも思っています。
なぜなら
『同じことを言っても受け止める人によって、伝わり方のパーセンテージが違う』
ことに気付けたからです。
これは年齢は性別には関係なく、その人の個性によるものが大きいと分かりました。
例えば文系や理系で分類する人がいたとしてExcelの学習の際に、自分は理系だと思われる人には操作手順や関数の使い方を数式のように説明します。
一方文系だと思われる方には、まるで国語をしているかのように文章で説明するようにすると理解をしてもらいやすくなります。
その個性の違いをカウンセリングで見抜く力が付きました。
何気ない日常会話であっても、考え方やものの捉え方によって、ニュアンスが違うのです。
近くで操作を見ていたらどういう考えをもって行動しているのか、が全然違うのです。
慣れてくると
「あ。この人は次にこんな行動をするだろうな。」
とか
「こういうつまずきをしそうだな。」
とか
「こんなアドバイスをしてあげたら理解してくれるかな。」
など、その人を知れば知るほど適切なアドバイスと距離感を保つことができます。
私がインストラクターとして心がけていたことは
「自分の力でやりたいことができるようになって卒業してもらう」
ということでした。
受講生の中には、答えを知りたい人がいます。
もちろん答えまで導くことは簡単です。
しかしそれを教えてしまっては力が付かないことはわかっています。
ですから答えを教えることはせずに、ヒントを出しながら自己解決できるようにアドバイスをすること、その微妙なラインでバランスをとっていくことに注力していました。
【自分の力で何とかなるものだ】
そうして私というインストラクターがだんだん確率していくと、受講生も
「自分でできた!」
という実感が持てるようになり、操作もスキルもどんどん上達していくのです。
最初パソコン教室に足を踏み入れた時は、緊張していたり自分にできるのか不安に思ったりする受講生も多くおられました。
私は経験上、パソコン操作の不安の大部分は入力にあると思っています。
タイピングができるようになると、入力時間が早くなり、考察することに時間を割けます。
逆に入力が遅いと操作が遅くなり、時間が足りない、自分はまだまだだ、向いていない、などマイナス思考に陥りがちです。
そこで勤務していたパソコン教室ではタイピングにもしっかり力を入れていましたので、私もそれに従ってタッチタイピングを推奨していました。
それこそ初心者さんであればあるほど、タイピングはこうするものだ、という正しい基礎を身につけられるので、成長スピードは相当速くなりました。
またパソコンは触ってきたよいう人であっても、人差し指だけでタイピングされている方は、どうしても入力スピードが上がらないので、もどかしい思いをされていましたが、そんな方にもタッチタイピングをマスターしてもらうと効率がグッと上がって
「教室に通って良かった」
とおっしゃっていただけました。
このタイピング指導で経験したことは、
『誰でも初めてのことは不安。だけどやってみると意外に簡単にできるもの。不安に寄り添ってサポートすることで自信をもって先に進むことができるようになる。』
ということです。
どんなことでも本来の基礎基本がありますよね。
それを一番大切にすると、そのあとのスキルアップはどうにでもなるものなのかもしれませんね。
【私流の指導方法】
パソコン教室には多様な人たちが来られます。
日々の業務が忙しくてクタクタになったとしても、インストラクターの仕事が楽しくて、やりがいを感じていたのは、私、人間観察が大好きなんだな、ということを痛感したからかもしれません。
というのも、苦手な人はいないのです。
どんな人も興味の対象で、意見の違い、感性の違いに、どうしたらこの人に伝えたいことが正しく伝えられるんだろう。
伝わるようにするための語彙を増やす努力として本を読んだり、趣味などを聞いて、なぜそれが好きなことなのか探って、共通点を見つけたり、とにかく出会う受講生のみなさんには、
「ここに来てよかった、学べてよかった。」
と思ってもらうためには、自分がどうすればいいのか、日々真剣に考えていました。
そこに同じ答えはなく、試行錯誤の繰り返しではありますが、そんな作業もきらいではないのです。
とにかく人と接することが楽しくて大好きでした。
だからインストラクターの私はいつも笑顔で元気いっぱいだったと思います。
(受講生さまにもそう思われてたと信じたい)
これを
【私流】
と言いかえていいのかわかりませんが、本当に人と接するのが好きなので、私なりに感じた伝え方、というのが確立していった気がします。
それは一人一人に寄り添ってきたからこそ発する言葉があるし、その人を思って真剣に接していたからこその伝え方があったんだろうと思うのです。
時に言葉足らずでうまく伝えられないことがあっても、その真剣さは伝わりますよね。
当たり前のことかもしれませんが、インストラクターといっても偉いわけではないので、決して上から目線にならないように、とか胸ポケットに挿しているボールペンの先で指導をすることがないように、柔らかい物腰で接することを心がけていました。
やはり、人と接する原点は
『自分がされて嬉しいことを人にする』
ではないでしょうか。
今でもその気持ちは変わりません。
ご購読ありがとうございました。
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